皇位継承問題について、男系限定派の中から
新しい動きが出て来たようだ(『国体文化』令和5年9月号)。
それは「女系(母系)継承を非とし、男系(父系)継承を
護持すべきであるが、伏見宮系旧皇族末裔への皇籍付与には
様々な問題があり、現行制度を当面は維持するのが最善」
とする意見らしい。「その代表的な論者は村田春樹氏であらう。
村田氏は《保守の会》機関誌『保守』(第11号)に寄稿した
『非難覚悟で敢えて叫ぶ、旧宮家復活養子縁組に反対!』において、
その実現可能性に疑問を呈し、その原理的問題点を列挙した」という。旧宮家プランへの反対は、別に“保守”でなくても、
皇室の「聖域」性を守ろうとするならば、当然の結論だろう。元々、現在の皇室典範で婚姻以外の皇籍取得を否定した(第15条)のは、
「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を保つため」
(法制局「皇室典範案に関する想定問答」)に他ならない。戦後、早い時点で既に「その事情の如何に拘らず、
一たび皇族の地位を去られし限り、これが皇族への復籍を認めないのは…
君臣の分義を厳かに守るために、極めて重要な意義を有する」
(神社新報社·政教研究室編『天皇·神道·憲法』)との指摘が、
神社界·民族派の立場からなされていた。しかも、普通の生活感覚を備えていれば「その実現可能性に疑問」
を抱かずにはおられないはずだ。
その意味では、ごく真っ当な意見と言える。
しかし「女系…を非とし」たままで、目の前の皇室の危機にいかに
対処するのか。「今我々がするべきことは養子云々ではない。
悠仁親王殿下にお嫁に来る素晴らしい女性が出現するよう祈ることである」私も勿論、そのように祈りたい。しかし畏れ多いが、
一夫一婦制のはもとで「男系男子」限定という現在の“ミスマッチ”な
ルールを放置したままで、そのような女性を期待することは至難だろう。
更にそのような女性がもし現れても、最低でも1人以上の男子が
生まれなけば、皇室は終焉を迎える。旧宮家プランを拒否するのは当然ながら、現行制度を維持していくら
「祈」っても、それによって危機を打開できると考えるのは、
余りにも楽観的ではあるまいか。なお、前出『国体文化』の記事で私見について「男女差別」を理由として
皇室典範の改正を求めているかのように整理されているのは、
議論の“入口”と“出口”を見誤っており、いささか残念。【高森明勅公式サイト】
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